日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。
そこに競馬があるから > コラート競馬場 > コラート競馬場 その21 ~嗚呼いとしのコラート競馬場~
レースの合間に宝くじが売られていた
*コラート競馬場レポートの続編です。
初めからお読みになる方はコラート競馬場レポートその1からどうぞ。
どもども。荷桁です。コラート競馬場も21本目となりましたね。
前回のレポートの最後でも申し上げたとおり、コラート競馬場の紹介という部分では、もうこれと言って書くことは残っていないのですが、中締め代わりに、もう少しウエットな観点でこの競馬場の魅力をご紹介したいと思います。
個人的には、コラート競馬場はこれまで訪問した競馬場の中でもかなり好きな部類の競馬場だ。タイの競馬場というのは雰囲気は古き良き鉄火場であり、庶民の娯楽感も満点ということで荷桁としては総じてそそる傾向にあるのだが、コラート競馬場はバンコクほどカチッとしておらず、同じローカルでもチェンマイほどのんびりしていない、独特の魅力がある。うまく説明できないのだが、現地ファンの競馬熱と、競馬関係者が実施する真剣なレースとがいい相乗効果になって、他の競馬場にはない、独特の「アツさ」を生んでいるのだ。このアツさこそが、コラート競馬場の最大の魅力で、これは現地に行っていただければ必ずや感じていただくことができると思う。
いろいろ堅苦しいことを述べましたが、要するに「俺はコラート競馬場のこと、ムチャクチャ気に行っちゃったから、もうちょっとだけ撮った写真を見ながら、いい感じの追体験してくださいよ」ということをこのレポートでやりたいだけなので、ご興味がある方のみ、ご無理のない範囲でお付き合いいただければ幸いです...
さて。そんな訳でコラート競馬場レポートの最後は、荷桁がこの競馬場の魅力を延々と語るだけということになりましたのでよろしくおねげーいたしやす。とりあえず写真を見ながら、ゆるゆるとコラート競馬場に想いをはせていくという感じで進められればと思っているので、ご了承くださいませ。
まず、この日のコラート競馬場は天気が良かった。何でもないことではあるが、これは大きなポイントである。もっともタイという国は季節がハッキリしていて、荷桁が訪問した11月末~12月頭というのはだいたいこんな感じのからりとした好天になるのである。東南アジアらしい猛暑や大雨を体験するのもそれはそれで旅の醍醐味ではあるのだが、どうせタイに行くのであればいわゆる乾季に行くのがおススメである。
そして、この好天の下、のんびり走路パドックを周回する馬たち。コンクリの仕切り1枚で隔てられた走路と観覧席の距離感も相まって、何とも牧歌的な雰囲気を醸し出している。なんやかんや言ってはいるが、ここはダートコース小回りの、タイの片田舎の軍営地方競馬場なのだ。
そしてコラートという街は思った以上に静かな街だ。ふと場内アナウンスが途切れた時に空を見上げると、心地よい静けさに気が付かされたりする。バンコクは車の走行音など常に何らかの騒音がある街だが、コラートやチェンマイくらいの都市になると、そのあたりは雲泥の差だ。この静けさというのもコラート競馬場を楽しむ上では押さえておきたいポイントである。
そんな競馬場にはご覧の通りアツいファンたちが集っている。どこかしらのんびりしていたチェンマイの客筋、ワーワーとせわしないバンコクの客筋と比べても、コラートの競馬ファンたちはのんびりしつつもわりとガチンコで馬券を楽しんでいる雰囲気があってなかなか良い感じだ。これは競馬歴の長い人にしかわからない感覚だと思うが、客の醸し出す雰囲気がやや他の場に比べてレベルが高い感じがするのだ。身分や身なりの良し悪しではなく、きちっとの競馬場のことが分かっていると言うか、毎週来てそうな常連さんの割合が多い印象だ。
この常連さんたちが、またいい雰囲気を出している。騎手発表時にはこうして手書きのホワイトボードにオヤジたちがわらわらと集い、ワーワーと予想合戦が始まる。そしてレースが始まれば大声で叫ぶ。このファンのアツさがコラート競馬場なのだ。
決して行儀がいい感じではないが、ここの競馬ファンたちの醸し出す雰囲気には妙な説得力がある。タイ語が離せないのがあれだが、一人ひとりにここでの想い出を訊いてみたら、いろいろな競馬エピソードが出て来るんだろうなあ。
タイは馬券のネット発売が行われていないため、馬券を楽しもうと思った場合は本場開催に来るほかない。全体の売り上げは年々シュリンクしているらしいが、それでもネット販売に踏み切らないことがこの本場の賑わいにつながっている部分もあるので、こうしてよそからたまに来る分にはありがたい部分でもある。
今後、コロナをきっかけにしたりして馬券のネット発売なんかが始まる可能性もあるのだろうが、そうなったらこの雰囲気がどうなるのか、若干心配ではある。
もっとも有観客開催以外の選択肢があり得ないタイの競馬産業はコロナ下で長期の自粛を強いられているため、まずは再開というところまで持っていかないといけない訳ではございますが・・・。
そして、これらのアツいファンに応えるように、コラートのレースもアツい。
いや別にバンコクやチェンマイのレースがアツくないと言っている訳ではない。ただ、一周1マイルあるこれらの競馬場に比べて、一周1000mの小回りコースで行われるコラート競馬場のレースのほうが、客の目には、激しく、泥臭く映るもので、このあたりがアツさを醸し出している。
短い直線を使った1コーナーに入るまでの激しいポジション争い、3コーナーからのまくり合戦と他の競馬場では一味違うスピーディーな展開に、客のボルテージも最高潮に上がるのだ。
そしてコラートはだいたいのレースでフルゲートなのも良い。チェンマイでは小頭数のレースもままあったが、コラートではバンコクより余程小さいコースでバンコクと同等の頭数でレースが行われているのだ。
いかにも地方競馬という貧弱な施設の小さな競馬場で、賞金もバンコクと比べたら安かろうに、それでもフルゲート12頭のガチンコ勝負が毎レース行われて大声援が起きているというのがコラートの強さだ。日本で知り合ったタイ人の男性に「タイの競馬場をいろいろまわってるんですよ」と言ったら「コラートは行きましたか?あそこが一番有名。すごく人気なんです。」と言っていて、いやいや一番はバンコクだろうに、とそのときは思っていたのだが、彼がそう言っていた理由は今となってはよく分かる。ここのレースは純粋に賭けとして面白いのだ。
もちろん、ジリ貧の軍営競馬場ということで八百長的なことやそこまでいかなくともヤリヤラズ的なものもあっても全然不思議ではないし、全部が全部ガチンコという訳でもないだろう。それでもこの競馬場のレースの妙な魅力というのは確かにある。
日本の小回りで言うと、笠松や旧名古屋競馬場なんかも小回りだが、レースの激しさ・トリッキーさ的な意味では園田や旧福山競馬場の雰囲気に近いと思う。もちろん観客の数や声援の大きさは日本の地方競馬なんかとは比較にならない。海外の競馬場を訪問するたび、何度となく言っていることだが、この競馬場には日本の地方競馬の原風景が残っている気がするのだ・・・。
場内の観客の表情や、何を言っているのか分からないけど何となく伝わってくる人々のやりとり。コラートというこれと言って何もない地方都市で暮らす人々の娯楽として、この競馬場はしっかりと機能しているのである。
そして今回、何故か日本人の荷桁に話しかけてきて酒を御馳走してくれた謎のオッサンたち。後半レースは彼らの近くで打っていたが、現地人の馬券スタイルなども観察できてなかなか面白かった。最終レースの後に「俺たちはだいたい毎週このへんにいるから、また来いよ」と言ってくれたのはいい思い出である。
また、観客だけでなく、場内で宝くじを売る売り子さんから、厩舎関係者まで、この競馬場では何故か妙な一体感があるから不思議だ。来る客にも迎える側にも、初心者不在、常連のみの、混じりっ気なしのコラート競馬人たちが形成する独特のカルチャーと空気感。そこに外国人として足を踏み入れるときの興奮ったらない。まるで他人の食卓に土足で上がりこむような感じ。それでいて、来るものを拒まない対応。初めて行ったにもかかわらず、ずっと常連だったかのような錯覚を覚えるのがここ、コラート競馬場だ。
国内・海外の競馬場、レース場をいろいろ旅打ちしてまわったが、この競馬場はまさに旅打ちの醍醐味を感じさせてくれる、個性的ながら普遍的な競馬場の魅力をしっかりと持った、いい競馬場であった。
アメリカから輸入した二線級の種牡馬が生み出す、ビミョーなサラブレッドたちが、毎週同じ距離を走るTHE・地方競馬場であるが、ここには確かに競馬カルチャーが根付いている。コロナ禍で開催中止が続くコラート競馬場であるが、開催中止中もfacebookなどで多くの情報を発信しているのもまたコラート競馬場である。近く復活してくることを祈って、このレポートの中締めとしたいと思う。
現地競馬オヤジたちにもああ言われたし、また会いに行かねえとな。
という訳で、最終レースが終わりとっぷりと日が暮れたコラート競馬場を後にする。
帰りしなに通りかかった駐車場には馬がいた。奥に馬運車でもいるのかな。今日は一日ありがとうございました。また来週、がんばってや~。
という訳で、タイの通算4か所目の競馬場となったコラート競馬場訪問はこれにておしまい。コロナ禍もあって海外の競馬場のストックもなくなったので、しばらくは国内競馬場の訪問記が続くと思いますが、引き続きお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
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またこのサイトの写真や文章は基本的に無断で使用されると困るのですが、もしどうしてもという方は荷桁までご連絡ください。そのほかご指摘やご質問がある方も荷桁まで直接ご連絡ください。コメント欄は管理が面倒そうなので当分オープンにはしないつもりです。悪しからず。
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