ロイヤルターフクラブ競馬場 その22 ~追憶のナンルーン競馬場~ そこに競馬があるから 忍者ブログ
日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。

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Royal Turf Club of Thailand
ロイヤルターフクラブ競馬場での一コマ。タイの騎手は騎乗する前に合掌する。


*ロイヤルターフクラブ競馬場レポートの続編です。
初めからお読みになる方はロイヤルターフクラブ競馬場レポートその1からどうぞ。





 どうも。荷桁です。ロイヤルターフクラブ競馬場(ナンルーン競馬場)のレポートも22本目となってしまいましたが、今回で打ち止めといたしましょう。冒頭の写真はタイの騎手が馬に騎乗する前に合掌している瞬間の写真です。タイでは騎手は馬に乗る前に軽く合掌する文化があります。仏教国のタイならではの光景と言えるでしょう。



 さて。今回のレポートのタイトルは「追憶のナンルーン競馬場」としております。最初のレポートで申し上げましたとおり、ロイヤルターフクラブ競馬場は2018年の9月18日をもって休止となっております。休止となってしばらく経ちますが、結局その後競馬場の移転や復活という話もないままなので、おそらくこのままその歴史に幕を閉じ、廃止になることかと思います。



 つまり、このレポートでご紹介した、ちょっと混沌としていて、そして暑くて熱いこの競馬場の様子は、今後はもう見られないということになります。そんな訳でちょっぴりおセンチな気分になってしまいますが、バンコクの地で王室の流れを汲みながら100年以上も続いてきたロイヤルターフクラブ競馬場の最後の様子を思い起こしながら、このレポートを締めたいと思います...


ロイヤルターフクラブ競馬場の装鞍所



 さて。ここまでいろいろロイヤルターフクラブ競馬場の様子を見てきたが、一番印象に残っているのは、やはり「人」の部分である。



 まず、競馬に携わる人々である。わずかに垣間見た程度ではあるが、そこには「競馬で食っている」人がたくさんいて、バンコクにもう一か所あるロイヤルバンコクスポーツクラブ競馬場と交互開催で開催は週に一日と、開催日程は少ないながらも、そこには確かに「競馬産業」が存在していた。



 もうひとつのロイヤルバンコクスポーツクラブ競馬場の2019年度の開催日程も、ロイヤルターフクラブ競馬場の廃止を受けて日程が倍になったという訳でもないし、勿論売り上げが倍になったり、賞金が倍になったりする訳でもないだろう。つまりロイヤルターフクラブ競馬場の廃止によって、バンコクの競馬産業の規模は一気に半分になってしまう可能性さえあるのである。それはもう一方のロイヤルバンコクスポーツクラブにとっても打撃であろう。



 今後、タイの競馬産業がどうなるのか、この競馬場にいた競馬関係者の人々はどうなってしまうのか・・・。今後も注視していかなくてはなるまい。




騎乗する騎手


騎乗する騎手



 冒頭に申し上げた通り、タイでは騎手が馬に騎乗する前に合掌してから乗るというカルチャーがある。これはタイで「ワイ」と呼ばれる挨拶で、相手への敬意を示すものとされている。基本的には目下もの者が目上の者に対してする挨拶とされているので、それを額面通りに捉えれば、タイにおける騎手と馬の関係は、騎手の方が馬に対して敬意を払う間柄ということになるだろう。まあ、騎手からすれば、馬に命を預けて、なおかつ馬に乗ることでお金をいただくということなのだから、そりゃそうなのかもしれない。もちろん、馬が馬主さんの大切な財産だということもあるんだろうが。



 細かいことはさておき、荷桁としてはこうしたタイ競馬独特の風景を見たときに「ああ、競馬の旅打ちを趣味にしていてよかったなあ」と何ともうれしい気持ちになるのだ。そして、この光景をいつまでも残しておいてほしいものだと思うのである。タイの競馬場がなくなってしまうのはもちろん避けてほしいことだが、競馬場が残っていても、逆に変に洗練されすぎて、こうした伝統的な仕草がなくなってしまうのはそれはそれで寂しいものがある。時代に合わせて変わっていかないと生き残れないというのが近代以降の競馬の常ではあるが、こういう、ここでしか見られない風景というのはどの競馬場も大切にしてほしいなあと思うのである。





観客に混ざるジョッキーたち



 この競馬場では騎手と観客の距離もなぜだか近い。



 写真に写りこんでいるオレンジ色の服をした男は、騎乗を終えた騎手だ。関係者通路がある100バーツエリアのスタンドにはこのように騎乗を終えた騎手が出てきて、客と一緒に予想をしたりレースを観戦したりしている。日本だったら大問題になりそうなもんだが、タイではフツーのことのようだ。騎手と会話したところで結果は変わらないほどクリーンなのか、当たり前のように八百長があってみんな麻痺してしまっているのか・・・。細かいことはよくわからないが、この国での競馬は我々が知っているそれより、随分おおらかなようである。




観客に混ざるジョッキーたち


観客に混ざるジョッキーたち



 騎手の中には観客に混ざって屋台でメシを買う奴もいる。減量のある騎手にとって、レース直後のメシというのはまた格別なのかもしれない。



 尚、ウェブでいろいろ調べるとタイの騎手も成功している者とそうでない者とで随分格差があるようで、廃業している騎手も多い。週に一日開催のレースの手当てだけではなかなか食べていけないだろうからなあ。本業で騎手をやっている人というのはタイではあまりいないのかもしれないね。




ロイヤルターフクラブ競馬場の馬道



 騎手以外の競馬関係者の皆さんの存在感もなかなかのものだ。



 タイではレースが始まる前と終わった後、本馬場入場に続く馬道にはたくさんの人が詰めかける。ユニフォームを着ている者もいるが、多くは何なのかよくわからない格好をしている。勿論日本のパドックで見かけるようなスーツに身を包んだ男は一人もいない。まあこの暑くてスコールが来るような泥だらけの競馬場でそんな恰好する方がおかしいので、当たり前っちゃ当たり前なのだが。




レースを終えた馬たち


レースを終えた馬たち


レースを終えた馬たち


レースを終えた馬たち


レースを終えた馬たち



 ちゃんとした芝の競馬場で、馬も騎手もそれっぽいのだが、どこか緩い雰囲気が漂っているというのが、非常にタイらしくていいんだよなあ。




ロイヤルターフクラブ競馬場の雑踏



 さらに忘れてはならないのがバンコク競馬オヤジたち笑



 ロイヤルターフクラブ競馬場のお客はそのほとんどがオッサン。『おじさん図鑑』のバンコク版がここだけで一冊書けてしまうんじゃないかというかというくらいいろいろなオッサンが闊歩しているぞ。




ロイヤルターフクラブ競馬場の雑踏


ロイヤルターフクラブ競馬場の観衆


ロイヤルターフクラブ競馬場の観衆



ロイヤルターフクラブ競馬場の観衆


モニターに見入る競馬オヤジたち


仲間同士談笑する競馬オヤジたち


ロイヤルターフクラブ競馬場の観衆



レースに歓声を送る観客たち


レースに歓声を送る観客たち



 タイ競馬オヤジに混ざって、競馬新聞とにらめっこし、オッズの動きに一喜一憂し、穴場に並んで、レースに叫ぶ。馬券は当たらなかったが、この競馬場での時間はまさに至福のひとときであった。観客もまばらでのんびりしている競馬場もそれはそれでいいんだけど、都会の大観衆の競馬場というのはやっぱりテンションも上がるんだよなあ。




カップルの観客



 ちなみに、極めて少数派ではあるが、こうしてカップルで来ている人らもいた。



 ここまでオッサンばかりを強調してきたが、女性もまったくいないという訳ではないのでご安心くだされ。場内は警察もウロウロしていて、荷桁が見る限りは喧嘩などもなかった。多少汚いだけで、場内の治安は問題ないので。




 さて。そんな訳で、名残惜しいが、ロイヤルターフクラブ競馬場のスタンドを後にすることにしよう。




ロイヤルターフクラブ競馬場のスタンドの外



 とはいえ、まっすぐホテルに戻るのもあれなので、少しだけ、競馬場のスタンド周りを見ていくことにした。




ロイヤルターフクラブ競馬場のスタンドからレースを終えた馬が出てくる



 すると、レースを終えた馬たちが外に出てくる様子に出くわした。



 小学生くらいの女の子や赤ちゃんを連れた女性などがいる流れがよくわからないが、とりあえずレースを終えた馬たちはここから出てきて、馬運車に乗り込むようである。




ロイヤルターフクラブ競馬場のスタンドからレースを終えた馬が出てくる


ロイヤルターフクラブ競馬場のスタンドから出てきたレースを終えた馬



 なんとも簡素な馬運車だが、彼らはどこに帰っていくのだろうか。



 またじっくりタイ語の文献でも読み漁って、どういうところに厩舎や生産牧場があるのか、なんつーことも調べてみたいもんだね。




ラーマ6世の像



 そしてこの競馬場を作ったラーマ6世の像も。この競馬場がなくなってもこの像だけは残るのかしら・・・。




Royal Turf Club of Thailand



 さて。そんな訳で計22本に及んだロイヤルターフクラブ競馬場レポート、いかがでしたでしょうか。



 申し上げた通り、タイを代表するバンコクの歴史ある競馬場がなくなってしまうというのは残念だし、今後のタイ競馬界に及ぼす影響も大きいことと思う。在りし日のロイヤルターフクラブ競馬場に思いを馳せると同時に、今後のタイ競馬がどうなっていくのか注目していかなくてはなるまい。




 っつーわけでロイヤルターフクラブ競馬場レポートは一区切り。最後まで読んでいただきありがとうございました。



 どっかに移転して再開したりしねえかなあ。いや、ホント残念なんですよ・・・(未練タラタラ)。




 



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*この競馬場が好きな方はこちらの競馬場もお好きだと思われます。

 ロイヤルバンコクスポーツクラブ競馬場 その1 ~再びバンコクへ~
 フートー競馬場 その1 〜さらにベトナム競馬へ〜
 セランゴール競馬場 その1~いざマレーシア競馬~
 ペナン競馬場 その1 ~再びマレーシア競馬へ~
 クランジ競馬場 その1 ~いきなりお詫び~
 ソウル競馬場 その1 〜韓国競馬に手を出すぞ〜




*ロイヤルターフクラブ競馬場に関する記事は以下にもあります。

 ロイヤルターフクラブ競馬場 その1 ~タイからのニュース~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その2 ~バンコクという街~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その3 ~行くまでの攻防~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その4 ~「タイ人」の競馬場~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その5 ~いざ競馬場内へ~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その6 ~いきなりの締め切り前発走~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その7 ~スタンドの全体像を把握せよ~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その8 ~装鞍所からの本馬場入場~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その9 ~ゲートインからゴールまで~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その10 ~馬券の買い方と種類~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その11 ~競馬新聞と予想~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その12 ~意外に立派な芝コース~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その13 ~スタンド1階の鉄火場感~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その14 ~メシの中心地・スタンド2階~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その15 ~スタンド3階の常連たち~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その16 ~スタンド4階 まったり常連ゾーン~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その17 ~やっと到着 スタンド5階~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その18 ~バックヤードと二階建て馬房~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その19 ~タイの競馬場グルメを探る~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その20 ~敗走への軌跡~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その21 ~豪雨、落雷、そして停電~
 ロイヤルターフクラブ競馬場 その22 ~追憶のナンルーン競馬場~




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