ラジャダムナン・スタジアム その1 ~ムエタイだってギャンブルだ~ そこに競馬があるから 忍者ブログ
日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。

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バンコクにあるラジャダムナン・スタジアム
バンコクにあるラジャダムナン・スタジアム


*タイの競馬場レポートの番外編です。
初めからお読みになる方はロイヤルターフクラブ競馬場レポートその1からどうぞ。





 どうも。荷桁です。



 前回のレポートまでタイはバンコクにありますロイヤルターフクラブ競馬場を見てきた訳でございますが、今回はちょっとブレイクということで、まったく違うギャンブルを見てまいりたいと思います。



 今回ご紹介するのはバンコクにある、ムエタイのスタジアム「ラジャダムナン・スタジアム」であります。タイの格闘技であるムエタイは皆さんなんとなくご存知かと思いますが、実際にどんな感じでやっているのか、というのは案外ご存知ない方も多いかと思います。



 かくいう荷桁もムエタイに関しては「蹴りもアリのボクシングだったっけ?」くらいのド素人知識しかなく正直関心もそんなになかったのですが、ガチャガチャとネットサーフィンしているうちに、なんと今回訪問したロイヤルターフクラブ競馬場のわりと近くにムエタイのスタジアムもあるということが判明したのであります。近くにあることが分かったついでにさらにいろいろ調べたところ、なんとちょうどロイヤルターフクラブ競馬場の競馬の開催日の夜に、試合が組まれていること、さらにさらに、ムエタイはタイではギャンブルとして人気があるという情報まで入ってきたのであります。



 競馬のあとにふらっと寄れるギャンブルスポットがあるのなら、とりあえず行っておかねばなるまい。っつーわけで競馬とはまったく関係ありませんが、今回はバンコクの名門ムエタイスタジアム「ラジャダムナン・スタジアム」のレポートでございます...


 

 
 
 
 そんなわけでラジャダム・ナンスタジアムでございます。



 とりあえず地図を見ていただくのが早いのだが、今回荷桁が訪問したロイヤルターフクラブ競馬場とラジャダムナン・スタジアムは徒歩で10~15分ほどの距離だ。荷桁が今回宿を取った「 LoogChoob the city Homestay 」というホテルからも歩いて15分ほどだったので、競馬場から一回宿に帰って一休みしてからふらっと歩いて行っても全然間に合うという距離感である。今回の旅ではムエタイに行く予定は全然していなかったのだが、とりあえずどんなものか見ておくにはこれ以上ない位置関係だ。
 
 
 
 かくして、競馬でタコ負けした荷桁はホテルに帰ってシャワーを浴びて、服も着替えて、さっぱりした状態でムエタイスタジアムへと繰り出したのである。ムエタイ場は18時くらいからオープンしていて、19時くらいに第一試合が始まり、23時くらいまでで10試合が行われるというのが大体のパターンだ。



 残念ながらこのスタジアムは近くに駅などもないので、もしバンコク市内の他エリアからアクセスしようと思った場合は、タクシーなりトゥクトゥクでということになるだろう。




 とりあえず荷桁が訪問したのは日曜日であったが、バンコクにもうひとつあるムエタイ場「ルンピニー・スタジアム」と交互に開催しているようで、ラジャダムヌン・スタジアムでは通常月・水・木・日曜日に開催があるようである。まあ、開催日程についてはこんなしょうもないブログを参考にせずに自己責任でテキトーに検索してくれい。しかし、バンコクに2か所あって交互に開催してるって、なんかロイヤルターフクラブ競馬場とロイヤルバンコクスポーツクラブの構図に似てる感じよな。




ラジャダムナン・スタジアムへのアクセス



 そんな訳でラジャダムナン・スタジアムにやってきた。



 ちなみに、ラジャダムナン・スタジアムを調べると「ラーチャダムヌーン・スタジアム」とか「ラチャダムヌーン ボクシング スタジアム」だとかいろいろな呼称が出てくるが、タイ語の発音を日本語に直すのが大変というだけでどれも間違ってはいないのであまりこだわらないようにしてくれたまへ。ちなみにウィキペディアによるとタイ語での正式名称は「ウェーティー・ムアイ・ラーチャダムヌーン」とのことである。



 観光客がある程度来る施設ということもあって、英語が通じるオッサン従業員や女性従業員がきちんといて、チケットの説明を受けた。外人とタイ人は料金が違うようで、一番高いチケットは2000バーツ、二番目に高いチケットが1800バーツだと言う。けっこう高いなおい。2000バーツの席はリングサイドらしいが、いきなりリングサイドというのもどうかと思い、とりあえず1800バーツの席をチョイス。荷桁の訪問した日は特に有名な人が出る試合でもなかったようなので、フツーに入れた。その後満席になることもなかったので、よほどの大人数や注目度の高い試合日でもない限り、事前購入などは必要なさそうな感じだ。




ラジャダムナン・スタジアムのリング



 さて。中に入るとこんな感じでリングがある。白状してしまうと荷桁はいわゆるフツーのボクシングさえも見に行ったこともないのでこれがフツーなのかどうかも分かりません。




ラジャダムナン・スタジアムのリングサイド席



 こちらがリングサイド席。まあ、見ての通り、リングサイドにある席である。お値段2000バーツ(訪問時)。




ラジャダムナン・スタジアムのクラブクラス席



 こちらが荷桁が座ったクラブクラス席。お値段1800バーツ。クラブクラス席より下がるが、目線は上がるため、まあ見やすいと言ってよいだろう。




ラジャダムナン・スタジアムのセカンドクラス席とサードクラス席



 こちらが一般席で、前方の席がセカンドクラス席、金網で隔てられた後方がサードクラス席である。セカンドクラス席の料金は1500バーツ、サードクラス席の料金は1000バーツだ。勿論これは外人向け料金で、タイ人は遥かに安い料金で入場することが可能だ。




ラジャダムナン・スタジアム



 さて。それではここでムエタイについて説明臭い話もしておこう。



 ムエタイについてはネット上でもいろいろ情報があるのだが、歴史や近代化、そしてギャンブルとの関係などの部分では、菱田慶文氏の『ムエタイの世界 ギャンブル化変容の体験的考察 』という本に分かりやすくまとめられていて非常によかった。菱田氏は自らタイでムエタイ修行をしながらカセサート大学でムエタイの研究をしてきたという異色のお方である。ムエタイがギャンブルの影響でどのように変容したかという観点での本書の内容は非常に示唆に富んでいるので、興味がある方はぜひご一読を。



 さて、という訳でこちらの本を参考にしながらざっくりムエタイの歴史を述べておこう。ムエタイはタイで伝統的に行われていた武術にその起源をもっている。ムエタイという言葉を直訳すると「タイ式の戦い」となり、ムエタイはタイの国技にもなっている。



 長らく、伝統的な格闘技として存在をしてきたムエタイだが、20世紀に入ると興行としての側面が強くなり、ただの武術から産業へと変化をしていくことになる。近代化したムエタイはやがてルールの整備が進み、ランキング委員会やタイトル認定組織が作られ、メディアやスポンサーもつくようになり、国民的なスポーツとして発展していく。しかし、それと同時にムエタイは賭けの対象としても人気が出てくる。賭けとして人気が出れば有名な選手に高いファイトマネーを払って試合を組まなくても、弱い選手同士であってもレベルが拮抗していれば興行としてはOKということになるため、ムエタイは効率よく興行としてまわっていくようになったのだ。



 タイではギャンブルは法律で禁止されているのだが、競馬が合法だったのと同様に、ラジャダムナン・スタジアム(王室関連会社が経営)やルンピニー・スタジアム(軍営)は例外的にギャンブルOKの施設として認められている。ムエタイで言うところのギャンブルOKというのは馬券のようなものを売っているという訳ではなく「このスタジアムの中では賭けをしてても捕まらないよ」ということになる。すなわち身元のよくわからない胴元が仕切る博打や個人間の賭けであっても、スタジアムの中ではOKということになるのだ。



 こうしてギャンブルと切っても切り離せないようになってしまったムエタイは、ギャンブルに最適化する形で発展することとなる。例えば、現代のムエタイでは重量級ではなく軽量級の試合が好まれる。これは軽量級の選手は打撃の威力がさほど強くないためいきなりのKOが発生しづらく、後半の逆転なども含めギャンブルとして面白いからである。また、入場シーンにもド派手な演出もなく、対戦する者同士は常にフラットな扱いを受ける(日本のボクシングなんかだと表向きはスポーツですが演出だけ見れば明らかに差がついているケースが多いですよね)。これもタイではムエタイはあくまでギャンブルなので、きちんと公平なスポーツとなっていることが重要となる。主催者がさもどちらかを勝たせたいかのような演出をしたり、待遇を変えることはありえないことなのだ。ムエタイはエンターテイメントではなく、スポーツ。そうでなければ博打として成立がしないという考え方なのだ。




ラジャダムナン・スタジアムでワイクルーをする選手たち



 さて。ちょっと前置きが長くなってしまったが、実際のムエタイの試合がどんな風なのかというのを見ていくことにしよう。ムエタイのルールとか技とかまでここで書いているとさらに前置きがムチャクチャ長くなるので、よくわからんという方はテキトーにググってくれたまへ。ざっくり、3分5ラウンド制ということとパンチ、キック、膝、肘、首相撲での攻撃がOKということ、3人の審判による判定決着だというところだけ押さえておいていただければよいかと思う。



 まず選手が入場すると行われるのがこちらのワイクルーという儀式だ。独特の音楽が鳴る中で選手たちはそれぞれの舞踊を行う。師匠や両親に感謝し、安全や勝利を祈願するという意味があるようだ。わりと選手ごとに全然違う舞をして、やる気がある奴とない奴とでけっこう差があるので見ていても面白いぞ。




最初はあまり打ち合わない



 ワイクルーが終わると試合開始である。この日は1ラウンド3分×5ラウンド制で行われていた。一般的にもそんな感じらしい。



 試合が始まるとまたしても独特の音楽が流れてくる。この音楽は場内で生演奏されていて、ムエタイにはなくてはならない音楽のようだ。








 こちらのYoutubeでワイクルーから5ラウンドまでの音楽が聴くことができる。独特の音色はなかなかクセになるぞ。




1、2ラウンドはあまり打ち合わない



 さて、いざ試合が始まっても、1、2ラウンドはあまり激しく打ち合わず、様子を見る。これもいきなり勝負がついてしまってはギャンブルとして面白みがないので、こうするのがお約束になっているのである。




3ラウンドからは激しく打ち合う



 3ラウンドからは激しく打ち合い、試合が動いていく。




賭ける観客たち



 一方、安い観客席のタイ博打オヤジたちは、このあたりからワイワイ賭けはじめ、選手にワーワーと声援を飛ばし始める。



 ムエタイ賭博は個人間の賭けがメイン。これも先ほどの本の受け売りだが、ムエタイ博打オヤジは赤コーナーの選手が勝つか、青コーナーの選手が勝つかを手のサインで倍率を示しながら賭けにのってくる相手を探していく。単純に1:1の賭けをするわけではなく、1~2ラウンドやその後の様子を見ながら掛け率を微妙に変えていくらしい。例えば3ラウンドあたりで赤が有利な展開だが、青が逆転する方に敢えて賭けるという場合は「赤が買ったら100バーツやるけど青が買ったら200バーツくれ」という条件で乗ってくる相手を探すのだ。競馬のように一律の締め切り時間もないので、面白いことに、試合展開を見ながらひとつの試合でいろんな人といろいろな賭け率で賭けを成立させてリスクをヘッジしていくということもやれるらしい。極めていけば面白い博打なんだろうな。




叫ぶセコンドと生演奏するオッサン3人



 打ち合いが激しくなると、セコンドの声援にも熱が入ってくる。こちらもこちらで自分ところの選手が勝つか負けるかで入ってくる金が全然違うから必死のパッチである。




選手と顔が似ているセコンド



 どことなく選手の顔とセコンドの顔の雰囲気が似ているので、確証はないが親子かもしれないな・・・なんていう組み合わせもあった。




ラウンド間の選手



 こうしたラウンド間の選手の様子を観察してくのもなかなか興味深い。こうして休んでいる間に賭けは盛り上がるのだ。




打ち合う選手たち


賭ける観客たち



 激しい打ち合いになると客の視線も熱くなる。



 中には判定に影響を与えるべく、いい膝蹴りが入ったときなどに大声を出してレフェリーにアピールする博徒もいるらしい。競馬では声援が大きければハナ差がひっくり返るなんつーこともまずないが、KOだけでなく判定勝ちも多いムエタイのこと、こうした駆け引きがあるのもまた面白いことである(実際、最前列で異様な大声を出しているオッサンは何人か目撃した)。



 ちなみに、よく見るとセカンドクラス席とサードクラス席の間には金網があるが、これはご想像のとおり、安い席の客が暴れたり物を投げたりということがあったためつけられた金網とのことである。



 さて。そんなこんなで、生まれて初めてのムエタイ場訪問となった訳だが、わりと楽しくムエタイを観戦することができた。外国人が中心の席ということもあって博打には参加できなかったが、それでも格闘技場でもあり、賭博場でもある、タイのムエタイ場の雰囲気が味わえて非常によかった。
 
 
 
 
Muay Thai 
 
 
 ちなみに、この日のハイライトはこちらのKOシーンである。実はこの日はほとんどが判定勝ちで、KOシーンはこの試合だけだったのだ。動画はたまたま横に座っていた白人のあんちゃんが撮っていたのだが、ラッキーなことに、話をしているうちにメールアドレスを交換することとなり、この動画ファイルを送ってくれたのである。



 素人がスマホで撮った動画なので見ていただければ場内の盛り上がりをお察しいただけることと思う。タイの文化を知るいい機会でもあるのでバンコクに行かれる機会があればぜひムエタイもご覧くだされ。



 ちなみに繰り返しになるが、このレポートを書くにあたっては、参考文献として、菱田慶文氏の『ムエタイの世界 ギャンブル化変容の体験的考察 』という本を大いに参考にさせていただいた。



 ムエタイの情報屋で莫大な富を築いたオッサンの話があったり、観客の声を聴いて賭ける選手を決める盲目のギャンブラーがいたという記述があるなどホンマに興味深い本なので、ご興味を持たれた方は是非ご一読を。



 さて。そんな訳ではじめてのバンコクでロイヤルターフクラブ競馬場に行ったのち、ムエタイも堪能して日本に帰ることになった荷桁。次回以降はどんな旅になるのやら・・・。




 



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