日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。
そこに競馬があるから > 水沢競馬場 > 水沢競馬場 その3 ~水沢競馬場史~
水沢競馬場入場門
*水沢競馬場レポートの続編です。
初めからお読みになる方は水沢競馬場レポートその1からどうぞ。
水沢江刺駅からバスに乗って、競馬場入口のバス停から歩いて、ようやく遠路水沢競馬場までやってきた。ちなみに、本州の競馬場はこれで全制覇だったので、感慨もひとしお。
最初からお読みの方は把握されているかと思いますが、この訪問は2009年の6月に行っているので、現在は写真や文章の内容と若干異なっていることも考えられますのでご注意ください。
さて、いよいよ水沢競馬に侵入ということになる...
あらためて、水沢競馬場入口。
なにやら立派なレリーフに水沢競馬場、とある。建物自体は小さいので簡素に見えなくもないが、それでもちゃんとした地方競馬場にテンションも上がる。
ただ、場内に入る前に、門の前に香ばしい物件を発見。その名も食堂ダービー。ディープすぐる。何やらまだ開店の気配がないがどうなんだろう。須田鷹雄氏がここをおススメしているという噂もあるので、今度行ったら食べてみようかしら。
よくよく見るとタテの看板が「ダービ食堂」になっとるがや。昔の看板ってこういうミスが結構あるけど、だれがこんなミスするんだろう。そして、なぜだれもこれに突っ込まずに時が過ぎていくんだろう。そう、こんなことを考えてしまう荷桁は立派な現代人・・・。細かいことは気にしないのがいいのだ。
ダービ食堂の脇には「奥州愛馬の会専用窓口」なるものを発見。なんのこっちゃわからんが、奥州愛馬の会というのは岩手競馬をサポートする団体とのこと。入場料や指定席が割引になったりするのだろうか。
中に入ると、左手にいきなりパドックが現れる。いやはや何とも話が早い競馬場だ。
ちょうど1レースのパドック周回が始まったところだったようで、馬たちがパッカパッカやっている。うほほ、競馬場だ競馬場だ!
とまあ、テンションも上がってきたところで、少しは学術的な話もはさんでおこう。水沢競馬場の歴史についてだ。
実は、岩手県における競馬の歴史は古い。
岩手は古来から馬産地として有名な土地であった。
古くは坂上田村麻呂の頃から、さらに奥州平泉時代では、源義経の愛馬「太夫黒」など歴史に名を残した名馬をたくさん輩出するとともに、人間と馬が一つ屋根の下で暮らす南部曲がり家や馬頭観音信仰、無病息災を願う「チャグチャグ馬コ」などに見られるように、生活面でも馬と関わりの深い生活文化をはぐくんできた歴史を持っているのである。
ちなみに荷桁の大学時代のバイト先に、岩手県の滝沢村出身のやつがいて、チャグチャグ馬コに2回乗ったことがあると言っていた。ハイ、余談。
んで、江戸時代になると南部藩の主導により、馬産がさらに活発化。南部藩(盛岡のほう)および伊達藩(水沢のほう)の各地の神社境内では祭典競馬や奉納競馬が行われていたとされ、ますます馬文化が隆盛する。
水沢競馬のルーツになっているのは、この神社でやっていた競馬のうち、現在の水沢区の中心街にある駒形神社で行われていたものだとされている。こうして見てみると、もともと岩手の人々の生活には馬が自然と存在しており、馬への熱意や造詣(馬リテラシー?)が深い人々が多かったという文化的背景が分かってくる。
明治に入って富国強兵が叫ばれると、大量の軍馬が必要とされ、馬産に優れた岩手はその供給地として発展することとなった。
さらに日本初の洋式競馬が1861年に横浜・根岸で行われると、それから遅れること10年後の1871年、岩手の盛岡でも1周1000mの競馬場が作られることとなった(旧盛岡競馬場)。そして1883年に設立された岩手調馬会社により、1884年9月に盛岡にて第一回の競馬が行わることとなったのである。これが岩手における近代競馬のスタートであった。
ちなみにこれは横浜の根岸、東京の上野不忍池に続く日本で3番目に早い近代競馬と位置づけられている。
このような盛岡での競馬の発展を受けて、水沢でも1901年、現在の市街中心部、水沢公園のあたりに競馬場の原型が作られることとなった。その後は改修や拡張を続けながら、1920年代から30年代にかけて、馬券発売を伴う、競馬場として徐々に成功をおさめていくことになった。しかし戦争の悪化にともなって一旦廃止となってしまう。
そんな水沢競馬場は戦後の1948年に盛岡競馬場とともに復活。戦後まもなく水沢では通常の競馬と繋駕速歩競走などをやっていたりもしたらしい。
*繋駕速歩競走が分からんという方は
ムーニーバレー競馬場レポート
ポンパノパーク競馬場レポート
マルサ競馬場レポート
あたりをお読みいただけると、イメージがわくかと思います。
1964年に岩手県競馬組合が設立されると、競馬場も現在地に移転。
その後は盛岡とともに「岩手競馬」として順調に発展し、現在に至ると、こんな感じである。
長々と説明してきたが、要するに、岩手県は平安時代くらいからながーい馬産の歴史と馬文化が築かれてきた土地であるということ。そして近代競馬ということに関しても歴史と伝統をもって行われてきたのが水沢競馬場なのであるということがお分かりいただければOKだ。
そもそも考えても見てほしいが、合併前の水沢市の人口は6万人そこそこである。
こんな大都市圏でもなく、県庁所在地でもない、東北の一小都市が競馬場をずーっと存続させてきているというのはすごい話だと思いませんか?
おそらく現在、周辺人口なども考えると、門別競馬場以外では、水沢競馬場がもっとも閑散とした町にある競馬場だろう(笠松は一宮や岐阜に近い)。そう考えると、岩手、とくに地元水沢の人々がしっかりと競馬場を支えてきたということは非常に評価に値すると言えよう。
ただ、長く、高レベルな売り上げをたたき出し、メイセイオペラやトウケイニセイ、トーホウエンペラーなどの全国区の名馬を輩出して「地方競馬の優等生」とも呼ばれていた岩手競馬であるが、現在においてはやっぱり盛岡・水沢ひっくるめて売り上げは振るわず、毎年やばいやばいと言われている競馬場になってしまっている。
もともと人口規模がないところに、この不況ときているので、苦しいのも分からんでもない。馬産地だからといってその伝統だけで、公営競馬がやっていけない現実というのは充分にわかる。しかし、長きにわたる伝統や馬産地という背景があるからこそ「儲からないんでやめますね」という安易なことをしてしまったときの文化的な損失は計り知れないということもある。岩手や北海道の場合は荒尾や福山を廃止するのとはちょっと意味合いが変わってくるのだ。
まあ、もう少しだけふんばれば、馬券の販売という点ではJRAやほかの地方競馬との交流が進んでいくことになると思われる。あとは岩手がどう魅力的な番組を作っていけるかであろう。
政府にもお願い。
地方復興として、中央競馬、地方競馬、競輪、競艇、オート、すべての投票システムを同じプラットフォームにするための予算を付けてください。そして、場外馬券売り場をもっと手軽に設置できるような法改正を行ってください(パチンコ屋や居酒屋、ショッピングモールの中にATMみたいにして置けるとか)。それでダメなところは、廃止になって当然だと思うんで・・・。
・・・最後はやや話がそれたが、とにかく水沢もやや苦しい地方競馬場のひとつということ。みなさんもネットで馬券を買ってあげてくださいな・・・。ようは当てればいいんですから(おい!)
>>水沢競馬場レポートその4へ
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水沢競馬場 その1 ~水沢競馬場旅打ち~
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