クランジ競馬場 その3 ~なんやかんやでシンガポールへ~ そこに競馬があるから 忍者ブログ
日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。

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Singapore
シンガポールといえばやはりマーライオン

*クランジ競馬場レポートのつづきです。
初めからお読みになる方はクランジレポートその1
からどうぞ。






 いろいろ問題はあったけど、やっぱりすべてはクランジに戻ってゆくんだと思う。



 わたくし荷桁が大阪から東京に転居して1年経つか経たない頃の、2020年初頭。突如として発生した新型コロナウィルスは世界を一変させた。



 それまで世の中の動きや同世代の皆さんの社会での活躍っぷりなどまったく気にせず飲むわ打つわとちゃらんぽらんの生活を送っていた、荷桁も例外ではなかった。いわゆる「ロックダウン」が始まり、旅打ちどころか、近所のレース場に行くことも、居酒屋で酒を飲むことさえもままならない世の中が到来したのである。東京に越してきて早々に、桐生競艇、前橋競輪などの関東一円で未訪問のレース場もサクッと踏破して「さあ、さっさと国内を全制覇して、2020年からは海外を本格的に攻めたるで~」と鼻息を荒くしていた荷桁としては、大いに出鼻を挫かれた形になった。



 結局、制限が入ったり、緊急事態宣言によるオープンやクローズを繰り返したりということはあったが、競輪場や競艇場などを手始めに国内施設は早々に来場が解禁され、荷桁としても、とりあえず訪問済みのレース場がほとんどではあるが、本場でレースを楽しむことはできるようになった訳だが、その後の2021年、そして2022年に入っても、まだまだ海外旅打ちというのはできるような状態ではなかった...





 ところが2022年の春ごろには徐々に状況が変わってきて、各国が入国制限を緩和。日本に帰国したあとの隔離措置も、諸手続きを踏んでいれば必要がなくなり、ようやっと海外に行くことができそうな雰囲気が出てきたのである。



 とはいえ、荷桁が海外に行くとき、それすなわち十中八九は海外旅打ちに行くわけだが、肝心の競馬場がコロナから復活して入場を再開するというニュースがなかなか入ってこない。荷桁としてはまだ行けていなかった韓国の済州競馬場や、タイのウドーンターニー競馬場あたりが復活したら行きたいと思っていたのだが、まあ、そう都合よく近場で荷桁が未訪問の競馬場から復活してくれる訳もない。毎日海外にある競馬関係のTwitterやらFacebookを見ていたところ、どうやらシンガポールのクランジ競馬場は、いちはやく一般入場を再開するらしいとの情報が入ってきた。



 このブログをガン見している方ならピンとくるかもしれないが、クランジ競馬場と言えば、2007年、まだ荷桁が20歳のときに訪問した、荷桁にとっては人生初の海外旅打ちとなった競馬場である。



Singapore 新加坡




 この2007年に訪問したシンガポールは荷桁にとってもけっこうエポックな旅であった。実は荷桁は20歳になるまで、海外旅行には1度しか行ったことがなかった。しかもそのうち1回というのは、中3のときに、市の海外派遣事業に応募したら各校1人の枠に2人しか応募がないというミラクルが起きてたまたま行けたニュージーランドのみだったので、自分で航空券とホテルを手配して、自力で行く海外旅行というのは実際のところ、これが初めてだったのである。




Singapore 新加坡




 旅慣れている方はよく分かると思うが、シンガポールは治安もよく、それなりに英語も通じるので、海外旅行の練習台には持って来いという国で、実際のところ荷桁もこの旅とクランジ競馬場訪問を首尾よく終わらせることができ、その後の海外旅行および海外旅打ちに弾みをつける形になったのである。




 んで、話はもどって2022年だ。そんなシンガポールで本場に一般の観客を入れる競馬を再開することになった、というところからである。



 当然、荷桁にとってシンガポールのクランジ競馬場は訪問済の競馬場であるので、別に無理して行くような競馬場でもなかった。ただ、言うて2022年の時点で、最後の訪問からはなんと15年が経過していたし、皆さんもご存知の通り、当時はデジカメのSDカードの容量も256メガとかという時代で、そんなに潤沢に競馬場の写真が撮れた訳でもない。当時訪問した際のレポートを見ていただければ分かるが、おそるおそる数枚撮影した場内の写真で、無理やりレポートをこさえたという感じである。そんなこともあって、久しぶりにクランジに行ってみるのも悪くないなという感じであった。



 さらに都合のいいことに、荷桁には優秀な弟が3人いるのだが、そのうちの1人がこのときシンガポールに駐在していたのだ。ちょうどこの少し前くらいに駐在が決まって、その際に「コロナが明けたら遊びに行くで」などと言っていたので、これ幸いとばかりに連絡したら、自宅の一室を宿として提供してくれると言う。このときはまだLCCも完全復活とはなっておらず、航空券もちょっと割高だったので、弟が宿を提供してくれると言うのは渡りに船だ。



 最初の訪問から間が開いていて、しかも弟が泊めてくれて、というのはもちろんあるが、決め手となったのはやはり、シンガポールは荷桁にとっては海外旅行の原点であるということだ。コロナにより一度旅打ち人生がリセットされ、新たな気持ちで旅打ちを再開するにあたっての最初の訪問地が、我が海外旅打ちの原点シンガポールというのは、自分で言うのもなんだが、なんだかストーリーとしてよいではないか。




Singapore



 というわけで、2022年6月。荷桁は騎乗、もとい、機上の人となった。行き先は当然、シンガポールである。



Singapore




 到着していきなり、空港が昔と変わりまくっていたのにびっくり。シンガポールは日本などとは比べ物にならないくらい、経済成長を遂げているのを実感する。




Singapore



 到着日の夜は弟とその嫁さんに近所のホーカーで歓待を受ける。約2年ぶりの異国の空気、異国の料理を味わいつつ、荷桁より少し年上くらいのビール売りのおねえさまが注いでくれるカールスバーグをグビりとやると、久々に海外旅行をしている実感が湧いて、しみじみ嬉しい気分になる。コロナっつーのは、本当に人間の当たり前の楽しみを奪っていたんだなあ・・・。




Kranji Racecourse



 その翌日が早くもクランジ競馬場の訪問日となったが、なんと優秀な弟が気を利かせて、特観席を予約してくれていたので、荷桁と弟夫婦と3人で競馬場に行くことになった。



 荷桁が最初に訪問した2007年にはなかった地下鉄路線ができていたり、駅にホームドアができていたりと、ちょいちょい15年の月日を実感させられる。



クランジ競馬場


クランジ競馬場



クランジ競馬場



 こんな経緯で、久しぶりに訪問したクランジ競馬場は弟のファインプレーもあって、非常に楽しいものとなった。弟夫婦と優雅に特観席でレースを観戦したり、時折、下の一般エリアに降りて久々の場内をウロウロしてみたりと、クランジ競馬場を堪能しまくった。学生時代はビビッて一部のエリアに留まってちまちま馬券を買っていたのだが、さすがに当時20歳から35歳になって旅打ちの場数も踏んだこともあり、行ける範囲で隅から隅までクランジ競馬場を楽しむことができたのであった。




Singapore



 そんなこんなでえいやで行った2022年のシンガポール訪問以降、コロナはワクチンの普及などもあり徐々にあまり気にされない時代に突入。海外旅行の制限も順調に緩和されて行った。その流れに乗って、さらには弟が引き続きシンガポールに駐在していて宿泊がタダだったこともあり、荷桁はその後もちょいちょい暇を見つけてはシンガポールを訪問した。



 シンガポールと言えば、美味しいレストランやホーカー(屋台的なもの)ももちろん沢山あるのだが、ホテルに泊まる旅行ではなかなかできない体験をしようということで弟の家のキッチンを借りてローカルが行くマーケットで食材を仕入れて現地風に調理をしてみる、なんてことをやったりしていた。そんなこんなで弟が駐在しているメリットを活かして、競馬以外のシンガポールのローカルな生活的なものもけっこう楽しんでみたりしていたのだった。



 まあ、シンガポール自体、そんなに遠い国ではないし、クランジ競馬場についてもだいたい勝手は分かったし、そもそもシンガポール自体もなんやかんや弟のおかげもあって、味わうべきところは味わえたということで、まあ、弟の駐在が終わったら、また数年後か、誰かにシンガポールにでも行こうぜと誘われた時のついでにクランジ競馬場に行けばいいや、と楽観的に構えていたのだった。



 ところが、状況が一変したのは2023年の6月。いつものとおり、Twitterのタイムラインで競馬のニュースをダラダラ見ていたら、衝撃的なニュースが飛び込んできたのである。



 なんとシンガポール政府が2023年の6月5日、クランジ競馬場の土地を住宅確保のための再開発のために利用する計画を発表したというのである。そしてそれに合わせて、シンガポール競馬を運営していたシンガポールターフクラブも2024年10月をもってクランジ競馬場を廃止すると発表したのだ。いやいや、イギリス植民地時代から180年続いた競馬場をあっさり廃止とは、シンガポールは事実上の独裁国家とは言え、こりゃなんとも急な展開である。




Kranji Racecourse



 その後、いろいろ調べてみると、シンガポールの競馬は他のアジアの多くの競馬場と同じようにここ数年はジリジリと売り上げを下げていっていて、コロナでさらに打撃を受けて、その後も思うように回復しなかったようなのであった。日本にいると、競馬はネット投票の隆盛もあり、売り上げ好調なイメージが先行するが、世界的に見ても競馬が比較的好調なのは日本・韓国・香港などの、国際化やネット化に成功して、ちゃんと若年層も取り込めていて、なおかつカジノなど他ギャンブルとの競合が少ない国のみ。シンガポールは運営元のシンガポールターフクラブの動きがイマイチだったこともあり、うまいこと売り上げが伸ばせず、かといって存続のためのロビー活動や政府のゴキゲンを損ねないアピール的な動きをとることもできず、なおかつカジノが2010年にできて以降はこの国のギャンブルの主役はカジノに完全に移ってしまったこともあり、このたびの判断になったようだ。



 せっかくシンガポール競馬に慣れてきたところで廃止かよ、という感じで、なんとも残念だが、しかし、こうなると、旅打ち愛好者としては、いろいろ考えることが出てくるというもの。シンガポール競馬の廃止であおりを受けるのは、まず一番はお隣のマレーシア競馬だ。




Penang



 マレーシアの競馬はセランゴール、イポー(ペラ)、ペナンと3つの競馬場とその運営元がシンガポールのクランジ競馬場(シンガポールターフクラブ)とあわせて、マラヤンレーシングアソシエーション(MRA)という競馬団体を組織していて、開催日程の調整や、相互発売、人馬の交流・移籍などが行われているのだが、賞金水準が高くMRAの中核的存在だったシンガポールが無くなることで、ドミノのように廃止になる可能性がある。特に、売り上げが低調なイポーやペナンは開催日や開催レースも減ってきており、特にやばそうな感じがする。



 2023年の6月に廃止が発表されて、実際にクランジ競馬場がなくなるのが2024年の10月ということで、その間の約1年強の間にどう動くべきか、ということが問われることになったのである(実際のところは誰もわざわざ荷桁に問うている訳ではないのだが)。



イポー競馬場



 結論として荷桁は、とりあえずもうクランジはあと1回か2回くらい2024年になってから行けばいいやという判断をして、まずはイポー競馬場に行くことにした。廃止になることが既に確定しているクランジではなく、そのあおりを受ける前にMRAの中で唯一未訪問だったイポー競馬場に行っておいた方が、その後のことも考えたときに何かと良かろうと考えてのことである。競馬場は廃止が決まると急な日程変更やら、馬が足りずにこの日は開催やめます、みたいなことがよく起こったりするので、そういうことが起こりづらかろう平時のうちに行っておいたほうが良かろうという判断であった。




タイパ競馬場



 また、荷桁にとってはコロナが明けたら行きたい競馬場はまだまだ他にもあったので、24年2月にはこれまた15年ぶりに香港やマカオなどにも遠征した。ちなみにマカオも以前から経営状態が芳しくないことが伝えられており、シンガポールの廃止のあおりを受けそうだということで一応旅程に入れていたのだが、なんと航空券と宿を押さえた後の2024年1月にマカオ競馬も政府と運営元との競馬運営権契約が解除されると発表されて、実際にシンガポールより早い2024年4月にひっそりと廃止となってしまったのである。



 アメリカや欧州でもそうなのだが、競馬は大きい目で見れば明らかに衰退産業。アジアでも淘汰が進むのが2020年代後半のトレンドになりそうである。




 さあ、そして肝心のクランジ競馬場だ。なんやかんやマレーシア、香港マカオなどを挟んでいるうちに2024年も4月になってしまい、廃止となる2024年10月が近づいて来てしまっているので、そろそろクランジにも行かないとアカン状態になってきた。



 とりあえずいつ行くかという部分だが、日程を見ると、7月にシンガポールダービー、10月競馬開催最終日のシンガポールゴールドカップなど、いろいろ行ってみたい魅力的なレースはあるが、こうしたレースは廃止が決まっているとなると混雑が予想され、入場が事前予約制になったりするリスクもあるので避けた方がいいと判断。ただ、重賞がなにもない平場の開催日だと前述のように「馬が減りましたのでこの日は開催取りやめます」「マレーシア競馬と開催日程入れ替えました」などとなって空振りになるリスクがある(実際、マカオでは2日訪問する予定が1日それくらってしまい1日しか行けなかった)。



 ということで、まあ、入場が予約制にならずに、開催もずらされなかろうというビミョーな重賞開催日に行くのが無難だろうということで、2024年6月30日のスチュワーズカップ(シンガポールG2、4歳限定芝1600m戦)という、何とも言えない重賞をチョイスし、この日を持ってシンガポール競馬に別れを告げることとしたのである。



Singapore



 そして2024年6月29日。荷桁は通算5度目となるシンガポールへと降り立った。




Singapore



 とりあえずホーカーでちびちびとタイガービールを飲みながら、なんやかや、シンガポールにはいろいろな思い出があるなと振り返る。



 自力で行った初めての海外旅行、と同時に初めてとなった海外競馬旅打ち。その時の同行者とはその後も様々な海外競馬場に行った。初めてのクランジで見たフサイチペガサス産駒、そして当時まだ23歳くらいだった藤井勘一郎騎手。弟夫婦と訪問したクランジの特観席。その後に弟夫婦を再度訪問するために親も含めた家族でシンガポールに行ったのが初めての家族での海外旅行となったりもした(さすがに競馬場は行かず)。などなど、自分だけの思い出ではなく、家族との思い出を含め、何故かシンガポールというのは荷桁の人生の節目節目で登場する国だなあとしみじみ思う。



 2023年の12月には弟の赴任も解かれてしまったので、シンガポールから競馬がなくなると、もうこの国に来てこうしてホーカーでダラダラビールを飲むことも滅多になくなるかもしれない(荷桁はカジノはあまりやらない)。それはそれで少し寂しさはあるが、仕方ない。限りある旅打ち人生。競馬がなくなった国にかけられる時間は、そんなに多くない。



 とは言え、いろいろな思い出を提供してくれたたシンガポール、そしてクランジ競馬場とのいったんの人生の区切りになる節目ということで、最後のクランジ競馬場へをしかとかみしめ、しっかりとこのブログでレポートせむ、ということで、翌日、荷桁はクランジ競馬場へと向かったのであった・・・。



 という訳で、長々ととりとめのない文章を書き連ねてしまったが、要するにこれからしばらくは2022年6月および2024年6月の2度の訪問をもとに、シンガポールはクランジ競馬場のレポートをしていきますということになります。



 まあ、またゆるゆるとしたペースで進んで行くことになろうかと思いますが、お付き合いの程、何卒よろしくお願いいたします...


 


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