名古屋競馬場 その52 ~どんこの予想屋たち~ そこに競馬があるから 忍者ブログ
日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。

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名古屋競馬場の予想屋
名古屋競馬場の予想屋


*名古屋競馬場レポートのつづきです。
初めからお読みになる方は名古屋競馬場レポートその1
からどうぞ。





 どうも。荷桁です。さあ、どんこ競馬場レポートもなんやかや52本目ということで、いよいよ終焉が近づきつつある雰囲気もありますが、もう少しだけ続けてまいります。



 今回はタイトルにもありますとおり、どんこ競馬場の予想屋についてです。



 皆さんあまりイメージがないかも分かりませんが、どんこ競馬場が移転廃止になった2022年の時点においても、名古屋競馬場と笠松競馬場を併せた、いわゆる東海公営の競馬場は意外と予想屋という商売が残っている競馬場でございました。ネット投票の隆盛で、南関東もいよいよナイターに振り切りつつある中で予想屋さんの数も減少、園田・姫路の予想屋は早々に絶滅したりと言った感じで、全国的に予想屋さんらには厳しい経営環境が強まってきている中ではありましたが、そんな中でもまだ平日・昼間開催を貫いていた名古屋と笠松は、この当時はまだ予想屋がある程度機能しており、来場客の中にも予想屋とのコミュニケーションを楽しみにしている人らが少なからずおりました。



 かくいう荷桁もその一人で、どんこ競馬場に行く際にはほぼ毎回予想屋ブースに立ち寄り、名古屋弁でワーワー言いながら予想に乗ったり乗らなかったりしており、予想屋さんの皆さんには大変お世話になっていて思い出も多いので、まあここらでちゃんと予想屋さんについても振り返っておくかということで、このレポートを書いている次第でござりまする。



 ってなわけで、今回のレポートではどんこ競馬場に店を構えていた愛すべき予想屋さんの面々についてゆるゆると振り返っていければと思いますので、よろしくお付き合いいただければ幸いです...


名古屋競馬場の第一スタンド前の予想屋



 さて。そんなわけでどんこ競馬場の予想屋だ。



 まず、どんこの予想屋たちはどのへんにいたのか、という話だが、どんこ競馬場の予想屋はこんな感じでスタンドの裏に緑色の小屋で店を出していた。第一スタンドの裏と第二スタンドの裏に分かれて点在していて、その場所もどっち側にどの予想屋がいるかというのも、荷桁がどんこに通い始めてからはそんなに変わっていないような印象である。



 第一スタンドの裏には、大日さん、サブイチさん、KAZさんの3軒が。多少配置が変わったりはしたかもしれないが、まあ、だいたいこの3軒という感じであった。




名古屋競馬場の第二スタンド前の予想屋



 第二スタンドの裏には大統領さん、日東社さん、日本一さんの3軒が店を構えていた。このラインナップも末期は大きく変化はなかったような気がする。




名古屋競馬場の予想屋の小屋



 予想屋の小屋はこんな感じで、なぜか屋根があるすれすれのあたりに並んでいるのが常であった。まあ、すぐ前は馬券売り場なので、なるべく通路を塞がないようにということだったのだろう。




名古屋競馬場の予想屋の小屋



 小屋の背面には屋号が書かれていて、これは東海公営に独特のスタイルだったかもしれない。他は競輪や競艇も含めて、フツーに看板みたいなのに屋号書いてあることが多いからな。




名古屋競馬場の予想屋の屋号

名古屋競馬場の屋号



 屋号はこんな感じで、手書きで書かれているようだった。サブイチと日本一はこんな感じだが、日東社はいわゆる明朝体っぽい感じだしKAZさんところは英語なのでまたフォントも違う感じで、担当している営繕さんの問題なのか、店主がいろいろリクエストできるのかわからないが、まあそのへんは比較的ゆるい感じであった。




名古屋競馬場で予想を売る予想屋



 裏に屋号がどーんと書いてある以外、どんこの予想屋はあまりごてごてした装飾をしていないのも特徴だ。特に競艇やオートレースなど、予想屋といえば台に乗って演説するもんだ系のカルチャーを持つレース場では、新聞やら出走表やら独自のデータやら展開予想図やらなんやら、よくわからないシールやら熊手やらがゴテゴテついてたりするのだが、名古屋では見ての通りスッキリとしている。仏壇とか金のしゃちほこやら名古屋嬢やら、名古屋と言えばゴテゴテしているイメージがあるが、予想屋の台はなぜか地味なのである。




名古屋競馬場の場外発売時の予想屋の小屋


名古屋競馬場の場外発売時の予想屋の小屋



 ちなみに、この小屋は非開催日にはこんな感じでベニヤが張られて閉鎖される。店主自らやっているのか、よくわからんが、まあ、開放してると勝手に入り込んじゃう訳の分からんオッサンもいるだろうし、こうしておくのが無難なのだろうな。




名古屋競馬場の予想の紙



 東海公営では予想屋が売る予想は1レース100円が基本。競艇や競輪でよく見る一日予想みたいなものは、まったく見られないわけではないが「パドックを見ないとわからないから」という理由で売っていない店の方が多かった印象だ。



 上の写真は予想屋サブイチの予想。頭5→折り返しなしで2着は8、紐に6と7というかなり絞った買い目である。ただ、このくらい買い目を絞るというのは別に決まっているわけではなく、あくまで予想屋ごとの判断となる。




名古屋競馬場の予想の紙



 こちらはKAZさんの予想。10の頭から2着も2と3、3着も比較的多めに流している。これを絞れていないとみるか、「このレースは絞りづらい見た方がいいかもな」という判断をユーザーに提供するものと見るかで一長一短な感じである。無理に絞りすぎても抜けるし、買い目が広すぎても儲からないしという東海公営のむつかしいところと予想屋さんもいろいろ格闘しているのだ。



 こんな感じで同じ予想屋でもけっこうアウトプットが違うので、なおさら各予想屋さんの癖を把握するのが大事になってくるのだ。




名古屋競馬場のパドックで馬を見る予想屋



 さらにどんこの予想屋さんはパドックを重要視する、しないというのも店ごとでけっこう判断が分かれており、おもしろい。



 写真はサブイチさんが常連さんと一緒にワイワイパドックを見ている光景である。「倉知厩舎の馬は今日みたいにちっとチャカついとるくらいの方が走る」みたいな予想がしれっと出てきて、それがたまにズバっとはまるのも予想屋さんを利用する醍醐味だ。毎日レース場に行けないファンにとって毎日同じ場所でずーっとパドックを見ている予想屋の存在は貴重である。




名古屋競馬場の予想と馬券



 加えて、東海公営の予想屋は基本的に演説をしないスタイルなので、買い目について「頭これですか」「本命はヒモですか」みたいに聞くと、その温度感や根拠を教えてくれるところ。予想屋さんの微妙なニュアンスで3連単を頭固定にするか、ボックスにするかなどの判断をするのが試案のしどころであった。



 予想屋さんの予想で妙味があるのはやはりオッズ的な本命を消去法でやむなく◎にするケースより、思わぬ穴を本命にしているレースと、人気のヒモをバッサリいっているときだ。どんこは基本的にガチガチなので2番人気、3番人気が頭にくるレースを取れるとかなりおいしい。また本命がガチガチのときでも2~3番人気の有力なヒモが飛ぶと思わぬ配当になることがあるので、そういう予想が出てきた時には予想屋さんに予想の根拠を聞いて、その自信度などから思い切った馬券の組み立てをすると、うまいこと浮かせることができるチャンスが増えるぞ。



 ちなみに写真のレース結果は以下のリンク先のとおりである。3連単2点で的中するところまでは信頼できなかったので複勝をメインにしているが、4番人気を本命、2番人気を無印というサブちゃんの強気の予想に乗っかれたことでけっこうな配当を得ることができた。


 https://db.netkeiba.com/race/201748070709/




名古屋競馬場の第一スタンド側の予想屋



 さて。予想屋についてずいぶん語ってしまったが、どんこ競馬場終末期の予想屋さんのラインナップを最後に見ておくことにしよう。




名古屋競馬場の予想屋サブイチ



 まずは、このブログや荷桁のTwitterをガン見している人にとってはおなじみ、サブイチである。どんこ・笠松で、長年にわたり、荷桁がメインで通っていた予想屋さんだ。



 サブイチは当時どんこの予想屋協会的なものの会長も務めており「会長」と呼ぶ人も多い存在であった。会長とは言いながら、威圧的な雰囲気はなく、やわらかい口調で「ハイ、これが頭だよ」「ハイ、このレースは穴だよ」などと声をかけながら予想を売る、気さくなおじさんであった。たまに「ハイ、このレースはヤーさんの馬が2頭も出とるよ」などときわどいことをぶっこむのも危うくて面白かった。




名古屋競馬場の予想屋サブイチの予想



 サブちゃんの予想はとにかく点数を絞りに絞るところ。「配当が安いで、絞らな儲からんでね」と言いながら、強気の二点予想などをしれっと渡してくるあたりが、サブちゃんの魅力でもあった。ただ、絞るという使命感から、1・2着の着順違いや、3着での穴抜けもも多く、サブちゃんの予想を軸にちょいと自分で買い目を補ってやるのが、また思案のしどころでもあった。




名古屋競馬場のサブイチ



 サブイチはみんなからサブちゃんだの会長だの呼ばれていたが、本名は鈴木鐘一さんと言い、サブイチというのは「三べんに一回は当たらんと」という意味でつけた屋号だそうな。仲良くなるといろんな話をしてくれて「やっぱり坂本ちゃんが一番うまかったね。あとは吉田稔」などと昔の騎手の話をしてくれたり、笠松競馬場に旧岸和田競馬場に出入りしていたヤクザがやってきた日の話など、なかなかパンチの効いたエピソードを話してくれたりするのもまたよかった。



 なんか知らんけど、話が盛り上がって、住んでるエリアやらお孫さんの年齢まで教えてもらったこともあった笑


 個人的にもいろいろお世話になった、どんこの生き字引であった。




名古屋競馬場の予想屋大日



 続いては大日さん。予想屋の面々の中では比較的若く、常連さんも比較的若めの人が多かった。



 実はこの大日さん、店主の本名は渡辺雅貴さんといい、このあと紹介する大統領の店主の息子さんである。道理で周りの予想屋さんに比べて一世代若かったわけだ。親父さんとは違うスタンドに店を構えているのも、そういう背景を知るとなかなか趣深いところがある。




名古屋競馬場の予想屋KAZ



 続いてご紹介するのはKAZさん。こちらもほかの予想屋さんより一世代若い感じの予想屋さんだ。



 本名は湯槇和成さんといい、どんこ移転後の弥冨でも店を構えている(2023年時点)。屋号からしてちょっとイケイケな感じかと思いきや、非常に丁寧な口調でロジカルに買い目を紡いでくれる理論派の予想屋さんである。今後も弥冨でお世話になると思いますので、よろしくお願いいたします。




名古屋競馬場の第二スタンド側の予想屋



 さて、第1スタンド裏手にいた3軒の予想屋さんを紹介したので、お次は第2スタンドである。




名古屋競馬場の予想屋日東社



 まずご紹介するのは日東社さん。こちらはかなりのベテランで、人当たりのいい好々爺という感じの雰囲気の店主であった。



 どんこ競馬場の予想屋には珍しく、ホワイトボードに狙いレースを書いたりと、いろいろ情報発信をしてくれる感じであった。




Nagoya Racecourse 名古屋競馬場の日東社の新年あいさつ



 お正月になるとこんな感じで手製の挨拶を張ったりもしていた。こういうなんかほっこりするコミュニケーションがあるのもベテランの味であった。




名古屋競馬場の予想屋日本一



 お次は日本一さん。こちらもベテランの予想屋さんだ。



 日本一さんは武骨な雰囲気が魅力の予想屋さん。本名は南さんというそうだ。予想屋にしては朴訥とした感じで、あまり笑顔で愛想をふりまくタイプではないのだが、調子がいいとバンバン当ててきて調子に乗ると止まらないタイプだ。3レースくらいにチラッと日本一さんを見ると、しれーっと高配当の3連単を早々に2つくらい当てていて「うそ!?まじで?」となることもちらほら。大声を出さないタイプなので、紙に「的中」と書いて静かに掲出しているだけというのもまたご愛敬であった。前半に穴目を当てて、後半レースのときにはワイワイ人だかりができている、なんてのも日本一さんではまま見られる光景であった。派手さはないが実力派の予想屋さんという印象である。




名古屋競馬場の予想屋大統領



 最後にご紹介するのは大統領さんである。



 大統領さんは本名を渡辺寿雄さんといい、年齢はサブイチさんや日東社さんと同じくどんこ移転前当時でも70歳超の御大であった。先ほど申し上げた通り大日の渡辺さんのお父様でもある。



 体を悪くしていて一時期見かけない時期もあったが、それでも台に立ち続け、パドックと台との間を往復し続けていた姿が印象的であった。個人的にはあまりここで予想を買ったことがなかったのだが、サブイチさんがいつも大統領さんの体調を気にしていたのをよく覚えている。お元気にしているのだろうか・・・。



 さて。そんなわけで、どんこ競馬場の予想屋さんの面々をゆるゆると振り返ってまいりました。こうしてあらためて振り返ってみるとなんだかんだ、無個性と思っていた東海公営も独特の予想屋カルチャーを持っていたんだなとしみじみ。



 最近、弥冨や笠松にもあまり行けていないが、皆さんの元気な姿をまた見に行きたいものである。



 さあ、長引いているどんこ競馬場レポートですが、もう少しだけ続けさせていただきます・・・


 



>>名古屋競馬場レポートその53へ







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