日本国内、海外の競馬場の訪問記です。こんなことしてていいのかなあ。でもやめられない。
そこに競馬があるから > 福山競馬場 > 福山競馬場 その3 ~福山競馬場とアラブの話~
福山競馬場 入口
*福山競馬場レポートの続編です。
初めからお読みになる方は福山競馬場レポートその1からどうぞ。
どうも、荷桁です。福山競馬場レポートの続きを書いてまいりましょう。
さて、前回のレポートで福山競馬場に到着いたしまして、今回からはいよいよ競馬場内に踏み込みます。
冒頭の写真は2011年訪問時の福山競馬場の門である。前回の写真と垂れ幕などが違うのは、前回に掲載した写真は2008年訪問時の写真だったからであります。このように、このレポートでは2008年訪問時の写真と2011年訪問時の写真が混ざりながら続いてまいりますので、そのあたりの整合性はあらかじめご了承いただきたく存じます...
ちなみにこちらは入場門の脇にある、福山競馬所属騎手の一覧表である。
これは人数から言っても2008年に撮影されたものだというのがお分かりになるかと思います。
入場ゲートはチケット式ではなく、コイン式。100円玉を自動改札機のような機械に入れると、ゲートが開く。ゲートの右側に両替機、左側に指定席券売所がある。荷桁は訪問した二回とも一般席で観戦したので、ひとまず中へ進入していくことにしよう。
中に入るといきなりスタンドの裏手に出る。門から案内所を経てスタンドまでは屋根がついているので雨の日にはありがたいことだ。
スタンドはなかなか年季が入っていていい感じ。いかにも地方競馬な感じだ。
ちなみに、福山競馬場で写真を撮る場合には、このような撮影許可証が必要なので注意。
とはいっても、警備員さんの詰所のようなところで、名前を記入するだけでもらえるので、ハードルが高いものではない。もし場内で写真を撮る場合は、入場後近くにいる警備員さんに話しかければ詰所まで案内してくれるのでご安心を。これをつけてうろうろしているのはやや恥ずかしいけども。
さて、そんなわけで準備ができたら、ここいらで、福山競馬場の歴史について、触れておこう。
福山競馬場は1949年9月18日に当地に開設された。開設当初は福山市のほか、広島県、広島市、呉市も主催者だったが1968年から福山市の単独開催となり、福山市営競馬として長らく親しまれていた。1949年から考えるとかれこれ63年ということになるのか。
開設以来とくに移転などもなく、当地にて競馬を行っている競馬場である。
福山と言えば2002年に益田競馬場が廃止になってからは中国地方唯一の競馬場としてふんばりつづけていた競馬場でもあるが、有名なのは、長らく園田・姫路などと共にアラブ馬の競馬場として栄えていた、ということだろうか。
アラブ馬のことがさっぱりわからんと言う方はこのブログには少ないと思うが、一応アラブ馬について触れておこう。
そもそもアラブアラブと言うが、厳密に言うと日本の競馬場におけるアラブとはアラブ種とサラブレッドの混血の馬(アングロアラブという)をさす。アングロアラブの定義は日本ではアラブ血量(アラブ種を100%、サラブレッドを0%とした時のアラブの純血の度合い)が25%以上の馬ということになっている。まあ、めんどうなので、アラブの血が1/4以上の馬をアングロアラブというんだけど日本ではそれを単に「アラブ(アラ系)」と言っていたということだけ覚えておいていただければOK。以下表記はアラブ馬で通す。
次にアラブ馬が競馬でよく使われるようになった理由の話をしていこう。
そもそも、戦前にまでさかのぼると、日本において、競馬の存在意義はスポーツ・博打という以上に軍需産業としての馬の生産技術および、軍馬の質的向上のためのものであり、政府は、軍馬改良の為にサラブレッドの生産を奨励していた。
しかし、戦争がガチンコになってきた1929年になると、サラブレッドに比べて丈夫で粗食にも耐え、維持管理も比較的容易といわれるアングロアラブの生産を推奨する方針に変更し、同時にアラブ種及びアングロアラブによる競馬の競走の施行を命令した。以降、アラブ系の競走が多数編成されるようになり、アラブ馬が盛んに生産されるようになった。つまり、戦時の国の事情でサラブレッドではなく、アラブ馬が選択されたのだった。
そんな流れで戦争が終わるとこんどは戦災復興と言う名目で多くの地方競馬場が産声を上げており、中央競馬と併せ、軍馬としての需要はなくなった一方、競走馬の需要が大きくなっていた。
となると、やはりここでもアラブ馬の出番なのである。
戦後間もなくは、サラブレッドの頭数が足りず、観客の期待に応えられるレース編成が出来なかった。そんな中、アラブ馬は戦前からの流れで、数が多く、レースも数をこなせたので、主催者からしたら出走頭数をそろえるのに非常に都合がよかったのである。
コストの面でも神経質なサラブレッドと違い、気性は穏やかで丈夫、粗食にも耐えて扱いやすい。さらに血筋から能力が読みやすく、生産農家や馬主も手堅く儲けることができたという。
地方競馬に詳しく、アラブ馬主でもある札幌国際大学の大月隆寛教授は「アラブで稼いでサラブレッドで勝負をかける生産農家は多かった」とかつてをふりかえているそうだ。
中央では1950年代に出走馬の3割程度を占め、地方での登録数は70年代前半までサラブレッドを上回る1万2千頭前後に上った。
しかし徐々に人気はスピードに勝り、華やかさがあるサラブレッドに集まり、95年には日本中央競馬会(JRA)がアラブ馬単独のレースを廃止。地方競馬もそれに追随することとなって現在に至る。
以上、アラブ馬について。
文献はウィキペディアと朝日新聞デジタルを参考にした。
福山競馬では、上記の事情に加えて、コースのカーブがきつい構造だったため、スピードが出すぎず丈夫なアラブが、競馬場にとっても都合がよかったみたいなこともあったようだ。
しかし、頭数確保のため2005年から徐々に福山でもサラブレッドを導入することとなり、2009年には40頭ほどとなり、アラブ系のレース・重賞が廃止となった。
2008年に訪問した際に撮影したアラブ馬。メインレース「残暑見舞い特別A1 B1」にて2着したモナクリュウオー。父はスマノヒツト。実にこのレース出走10頭中9頭がアラ系。
現在では2頭のアラブ馬が福山には在籍しており、行った日に出会うことができたら、かなりのラッキーである。ハマノブルクとレッツゴーカップの2頭で、12月も出走してたから、年明けに行っても見られるはずだぞ。
地方競馬最多勝記録を打ち立てたモナクカバキチもアラブ系の馬であったが、引退してしまったことだし、福山競馬に行ったら是非、アラブ馬を探してみていただきたいところだ。荷桁が行った2008年にはまだうようよアラブがいたんだから、この4年は馬の世界では多大な時間なんだなあとしみじみ。
とまあ、しみじみ福山競馬場の歴史とアラブについて述べてきたが、荷桁が競馬を始めた2005年ごろまでアラブオンリーで通していたというのもすごい話だ。ちょっといくらなんでも頑なすぎたんじゃないかと思わざるを得ない。この変に頑なな姿勢が今回の廃止に至ってしまったんだとしたらそれはそれで残念な話だ。今更どうしよもないけど。
とまあ、字が多くなってしまったが、要するに、福山は古くよりこの地でアラブ中心の競馬を行っていて、アラブを引っ張っりすぎてちょっと浮いた存在になっちゃった競馬場なんだよ、ということを覚えていただければOKでございます。
次回、以降も福山の話をしてまいります。
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